札幌高等裁判所 昭和25年(う)607号 判決 1950年11月26日
控訴人 被告人 瀬戸由太郎
弁護人 倉谷海道
検察官 小松不二雄関与
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役八月に処する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人倉谷海道の控訴趣意は別紙記載のとおりである。
職権を以て按ずるに、原判決は、被告人は小樽市花園町東二丁目古着商佐々木伊介から角巻等の衣料三百三点の販売方を受任し、三石郡三石村方面で夫々売却し、その代金を保管中(一)昭和二十四年一月三日頃三石村字本桐三島栄吉方において、自己の賭銭に供して横領しと判示しているが、その横領金額が果して幾何であるか全然これを判示していないから、罪となるべき事実の判示としては不備であつて、結局原判決にはその理由を附さない違法があるものというべく、原判決はこの点において破棄を免れない。
よつて、弁護人の量刑不当の控訴趣意に対する判断は破棄自判において示すところであるから、省略し、刑事訴訟法第三百九十七条により、原判決を破棄し、同法第四百条但書により更に判決する。
(罪となるべき事実)
被告人は、古着商佐々木伊介から角巻等の衣料品三百三点の販売方を依頼され、これを他に売却し、その売却代金を同人のため保管中
(一) 昭和二十四年一月三日頃北海道三石郡三石村字本桐三島栄吉方において、内金四万円を自己の賭銭に供して、これを横領し
(二) 同年四月四日頃同所において、内金三万三千八百四十円を自己の賭銭に供してこれを横領し
(三) 同年同月七日頃同所において、金十万円を自己の賭銭に供して、これを横領し
たものである。
(証拠の標目)<省略>
(法令の適用)
被告人各所為は刑法第二百五十二条第一項に該当するところ、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条により犯情の最も重い(三)の横領罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内において、所論に考え、本件記録に現われた諸般の情状を参酌考量して被告人を懲役八月に処し、刑事訴訟法第百八十一条第一項に則り当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判長判事 黒田俊一 判事 猪股薫 判事 鈴木進)
(弁護人の控訴趣意は省略する。)